「社員にAI研修を受けさせたい。でも1人40万円は出せない」——この記事では、実際にこの助成金を使って自社の研修を提供しているAI×ノーコードの導入支援会社(支援実績150社以上)が、厚生労働省の令和8年8月3日版パンフレットと支給要領を直接確認した数字だけで解説します(2026年8月時点)。対象は事業主(法人)です。役員本人や個人事業主本人は対象になりません。
人材開発支援助成金は、中小企業なら訓練費用の75%+賃金1時間1,000円が戻る制度です。40万円・20時間の研修なら32万円が助成され、実質負担は8万円になります。
ただし2027年3月31日で終了予定です(令和4年〜8年度の期間限定として創設)。そして受講する社員に費用を1円でも負担させると、賃金助成まで含めて全額不支給になります。この2つを外すと、金額の話は意味を失います。
01 早見表——いくら戻るのか
先に金額だけ確認したい方のために、表を置きます。すべて事業展開等リスキリング支援コース(AI・DX研修で使う区分)の数字です。
| 項目 | 中小企業 | 中小企業以外(大企業) |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 75% | 60% |
| 賃金助成(1人1時間あたり) | 1,000円 | 500円 |
| 設備投資加算(1コースの導入費用あたり) | 50% | — |
経費助成には、訓練時間に応じた上限があります。ここを見落とすと計算が合いません。
| 実訓練時間(1人1訓練あたり) | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
| eラーニング・通信制 | 15万円 | 10万円 |
| 定額制サービス(サブスク型) | 1人1月あたり2万円 | |
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版(2026年8月時点)
02 人材開発支援助成金とは?【事業主向け】
人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に職務に関連する訓練を受けさせたときに、訓練費用と訓練中の賃金の一部が国から支給される制度です。申請するのは労働者ではなく事業主です。
ここが最初の分かれ道です。「リスキリング」で検索すると、個人向けの制度が大量に出てきます。この記事で扱うのは、会社が申請して会社が受け取る制度です。社員が自分で申し込む制度ではありません。
7つのコースがあります
人材開発支援助成金には、目的別に7つのコースが設置されています(2026年8月時点)。
| コース | 主な用途 |
|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新規事業の立ち上げ・DX・GX に伴う訓練。AI研修はここ |
| 人材育成支援コース | 職務に関連した知識・技能の訓練(一般的な社員研修) |
| 教育訓練休暇等付与コース | 有給の教育訓練休暇制度を導入する場合 |
| 人への投資促進コース | 定額制訓練・自発的職業能力開発など |
| 建設労働者認定訓練コース | 建設業の認定訓練 |
| 建設労働者技能実習コース | 建設業の技能実習 |
| 障害者職業能力開発コース | 障害者の職業能力開発 |
AI研修・DX研修で使うのは「事業展開等リスキリング支援コース」です。以下、このコースの内容を書きます。
なぜ助成率が高いのか
このコースは令和4年〜8年度の期間限定として創設されました。DX・GXという国策に紐づいた時限措置なので、経費助成75%という他のコースより厚い率が設定されています。裏を返せば、期限が来れば終わります。この点は「06」で詳しく書きます。
03 いくらもらえる?40万円の研修が実質8万円になる計算
中小企業が40万円・20時間の研修を1人に受けさせた場合、経費助成30万円+賃金助成2万円=32万円が支給され、実質負担は8万円になります。
計算の順番はこうです。
| 手順 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ① 訓練費用 | 研修の受講料 | 400,000円 |
| ② 経費助成 | 400,000円 × 75%=300,000円 ※10〜100時間未満の上限30万円と同額なので、そのまま30万円 |
300,000円 |
| ③ 賃金助成 | 20時間 × 1,000円 | 20,000円 |
| ④ 助成の合計 | ② + ③ | 320,000円 |
| ⑤ 実質負担 | ① − ④ | 80,000円 |
ここで多くの会社が間違えます
「75%だから、100万円の研修なら75万円戻る」——これは誤りです。
経費助成には訓練時間に応じた上限があります。20時間の研修は「10時間以上100時間未満」の区分なので、中小企業でも上限30万円です。100万円の研修でも、20時間なら経費助成は30万円で頭打ちになります。
つまり「金額 × 75%」と「時間区分の上限」の、低いほうが支給額です。研修を選ぶときは、金額だけでなく時間数も一緒に見てください。
1事業所あたりの年間上限
1事業所が1年度(4月1日〜翌年3月31日・支給申請日が基準)に受給できる助成額は1億円です。中小企業がこの上限に当たることはまずありません。
自社がいくら戻るのか、30分で確認できます
対象になるか・いくら戻るか・いつまでに何をすべきかは、従業員数と研修内容が分かれば、その場で計算できます。AI導入・活用の伴走支援を行う当社が、Claude・Claude Code実装研修を助成金の対象として提供しています(支援実績150社以上)。
04 誰がもらえる?対象になる事業主と受講者
申請できるのは雇用保険の適用事業所を持つ事業主、受講できるのはその事業所の雇用保険被保険者です。役員本人・個人事業主本人は対象になりません。
受講者の要件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者であること | 申請事業主が設置する雇用保険適用事業所の被保険者 |
| 訓練期間中も賃金が支払われること | 訓練を受けている時間も、通常どおり賃金を支払う |
| 職務に直接関連する訓練であること | その社員の仕事に直接つながる内容であること |
🔴 役員・個人事業主本人が対象外である意味
ここは実務で最もつまずく点です。「社長が自分でAIを学びたい」という動機で始まる相談は多いのですが、社長本人の受講には助成金は使えません。
使うなら、雇用保険に入っている社員を受講者にする必要があります。役員が同席して一緒に学ぶこと自体は問題ありませんが、助成の対象になるのは被保険者の分だけです。
受講回数の上限
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 助成対象となる訓練の受講回数 | 1労働者につき1年度で3回まで |
| うち eラーニングによる訓練 | 令和8年8月3日以降に提出した計画届の分は、1労働者につき1年度で1回まで |
| 定額制サービスによる訓練 | 人への投資促進コースの定額制訓練と合わせて、1労働者1年度3回まで |
eラーニングの回数制限は、令和8年8月3日からの変更点です。過去の情報を見て「3回使える」と考えていると、計画がずれます。
05 どんな訓練が対象になる?AI研修が対象になる条件
対象になるのは、実訓練時間が10時間以上のOFF-JTで、受講者の職務に直接関連する訓練です。AI研修も、この2つを満たせば対象になります。
3つの条件
| 条件 | 内容 | 実務での注意 |
|---|---|---|
| ① 10時間以上 | 実訓練時間数が10時間以上であること | 半日研修(4時間)は対象外。ここで多くの研修が落ちます |
| ② OFF-JT | 通常の業務から離れて行う訓練 | 業務をしながらの「見て覚える」は対象外 |
| ③ 職務に直接関連 | 受講者の仕事に直接つながる内容 | 教養講座・趣味的な内容は対象外 |
事業展開等リスキリング支援コースが対象とする3つの場面
このコースは、次のいずれかに基づく訓練が対象です。
- 事業展開——新規事業の立ち上げ、新分野への進出など
- DX・GX化——デジタル化、グリーン化に伴う訓練
- 企業内の人事・人材育成に関する計画に基づき、今後従事することになる業務の訓練
AI研修は②のDX化に該当します。「社内の業務をAIで自動化する」という文脈であれば、要件を満たします。
06 いつまで使える?2027年3月末に終了予定
事業展開等リスキリング支援コースは令和4年〜8年度の期間限定として創設されており、令和8年度末=2027年3月31日で終了予定です。
これは推測ではありません。厚生労働省の詳細版パンフレットの冒頭「概要」に、次のように明記されています。
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設しました。
「2027年3月まであるから、まだ余裕」ではありません
助成金は訓練を受けたら自動で振り込まれる制度ではありません。訓練の前に計画届を出し、訓練後に支給申請をする——この2段階が必要です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 訓練開始日から遡って所定の期日まで | 職業訓練実施計画届を管轄の労働局へ提出(★訓練を始めてからでは間に合いません) |
| 訓練期間 | 計画どおりに訓練を実施。出勤簿・受講記録を残す |
| 訓練終了日の翌日から2か月以内 | 支給申請(この期限を過ぎると支給されません) |
| 審査 | 労働局が審査し、支給決定 |
逆算すると、2027年3月末に間に合わせるには、遅くとも2026年内には計画届の準備を始める必要があります。研修会社を選び、カリキュラムを固め、計画届を書く時間が要るためです。
※計画届の提出期限の具体的な日数と、令和8年8月3日以降の提出方法の変更(訓練コースを追加する場合はコースごとに届出)は、支給要領で必ずご確認ください。
07 不支給になるパターン
最も多いのは「受講者に費用を負担させてしまった」ケースです。一部でも負担させると、経費助成だけでなく賃金助成まで含めて不支給になります。
特に注意すべき4つ
| やってしまいがちなこと | 結果 |
|---|---|
| 受講者に受講料の一部を負担させる | 賃金助成も含めて不支給 |
| 申請事業主以外(親会社など)が費用を負担している | 経費助成は対象外(賃金助成は対象になり得る) |
| 所定労働時間外・休日に訓練を実施した | その時間は賃金助成の対象外 |
| 訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請しなかった | 支給されない |
「社員のスキルアップだから、半額は自己負担で」という運用は、この制度と相性が悪いということです。会社が全額負担する前提で設計してください。
08 令和8年度の主な変更点
令和8年度は、eラーニングの受講回数が1年度1回に制限され、設備投資加算が新設されました。過去の情報のままだと、計画がずれます。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| eラーニングの回数制限 | 令和8年8月3日以降に提出した計画届によるeラーニング訓練は、1労働者につき1年度1回まで |
| 設備投資加算の新設 | 事業展開促進機器等の導入費用に対し、中小企業は50%。1人15万円、10人以上の場合は人数にかかわらず150万円が限度 |
| 計画届の提出方法 | 新たに訓練コースを追加する場合は、その都度、訓練コースごとに職業訓練実施計画届を提出 |
| 疎明書の追加 | 令和8年5月14日より、支給申請時に「受講料等の価格設定に関する疎明書」の提出が必要 |
09 賃金助成の細かいルール——ここで減ります
賃金助成は1人1訓練あたり1,200時間が限度です。そして所定労働時間外・休日に実施した訓練は対象外になります。研修の実施日時の決め方で、受け取れる額が変わります。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 限度時間 | 1人1訓練あたり1,200時間(専門実践教育訓練は1,600時間) |
| 所定労働時間外の訓練 | 賃金助成の対象外 |
| 所定休日の訓練 | 賃金助成の対象外(あらかじめ別日に振り替えた場合を除く) |
| eラーニング・通信制・定額制・育児休業中訓練 | 経費助成のみ(賃金助成なし) |
実務での意味
「業務に支障が出ないよう、土曜に研修をやろう」という判断は、賃金助成を捨てることになります。20時間の研修なら2万円分です。金額は大きくありませんが、「休日にやったほうが親切」と考えて損をしているケースは実際にあります。
あらかじめ別日に所定休日を振り替えれば対象になります。研修日程を決める前に、就業規則上の扱いを確認してください。
10 設備投資加算——令和8年度の新設
令和8年度から、訓練に関連して事業展開促進機器等を導入した場合、その費用の50%(中小企業)が加算されるようになりました。1人15万円、10人以上なら150万円が上限です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加算率 | 中小企業50%(1コースの導入費用あたり) |
| 限度額 | 支給対象労働者1人につき15万円。10人以上の場合は人数にかかわらず150万円 |
| 計算例(公式資料より) | 支給対象労働者が2人で、100万円の機器を1台購入した場合 → 30万円まで助成 |
| タイミング | 訓練終了後、設備投資加算の支給申請日までに機器を新たに導入すること |
これは新設されたばかりの制度なので、解説している記事がほとんどありません。AI研修とあわせて機材を導入する予定があるなら、確認する価値があります。
11 サブスク型の研修サービスを使う場合
定額制サービス(サブスクリプション型の研修)も対象になりますが、助成の上限は1人1月あたり2万円で、賃金助成はありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 経費助成の限度額 | 1人1月あたり2万円 |
| 賃金助成 | なし(経費助成のみ) |
| 1か月未満の期間がある場合 | 2万円に、その期間の日数を暦日数で除した割合を乗じる |
| 受講回数 | 人への投資促進コースの定額制訓練等と合わせて、1労働者1年度3回まで |
| 注意 | 同じ事業所を対象に同内容の定額制サービスを契約し、契約期間が一部でも重複する場合、重複部分は原則として支給対象外 |
集合研修とサブスクは、どちらが得か
金額だけで比べると、20時間の集合研修(経費助成30万円+賃金助成2万円=32万円)のほうが、サブスク(1人1月2万円)より大きくなります。
ただしサブスクは継続的に学べる、集合研修は短期集中で成果物が残る、という違いがあります。助成額だけで選ぶのではなく、「何が残るか」で選んでください。
12 他の助成金と併用できますか
同一の事由(同じ訓練の受講・経費・賃金)については、複数の助成制度を併給できない場合があります。東京都のDXリスキリング助成金など、自治体の制度と重なる場合は特にご注意ください。
公式資料には次のように記載されています。
同一の事由(同一の訓練受講、経費、賃金等)に係る助成制度を複数利用する場合、併給できない場合があります。詳細はそれぞれの助成制度を所管する都道府県労働局・自治体・団体などにお問い合わせください。
「国の助成金と都の助成金を両方もらう」という前提で予算を組むのは危険です。どちらか一方で計算し、両方使えるなら上振れ、という考え方にしてください。
13 よくある質問
人材開発支援助成金は個人でも受けられますか?
受けられません。申請するのは事業主(会社)で、受講できるのはその事業所の雇用保険被保険者です。個人が自分で申し込んで受け取る制度ではありません。個人が使える制度をお探しの場合は、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」など別の制度をご確認ください。
役員や個人事業主本人は対象になりますか?
対象になりません。対象は雇用保険被保険者です。役員本人・個人事業主本人は雇用保険の被保険者ではないため、その受講分は助成されません。雇用保険に加入している社員を受講者にする必要があります。
大企業でも受けられますか?
受けられます。ただし助成率と額が下がります。経費助成は中小企業75%に対して大企業60%、賃金助成は1人1時間あたり中小1,000円に対して大企業500円です。経費助成の上限も、10〜100時間未満の区分で中小30万円に対して大企業20万円になります。
いくらもらえますか?
中小企業の場合、訓練費用の75%(時間区分ごとの上限あり)+訓練時間×1,000円です。40万円・20時間の研修なら、経費助成30万円+賃金助成2万円=32万円が支給され、実質負担は8万円になります。ただし「費用×75%」と「時間区分の上限」の低いほうが上限になる点にご注意ください。
eラーニングの研修でも対象になりますか?
対象になりますが、条件が変わります。eラーニング・通信制による訓練は経費助成のみ(賃金助成はありません)で、経費助成の上限も中小企業15万円・大企業10万円と低くなります。さらに令和8年8月3日以降に提出した計画届の分は、1労働者につき1年度1回までという制限が加わりました。
何時間の研修から対象になりますか?
実訓練時間数が10時間以上である必要があります。半日(4時間)や1日(8時間)の研修は対象になりません。研修を選ぶ際は、時間数を最初に確認してください。
1人あたり何回まで使えますか?
1労働者につき1年度で3回までです。ただしeラーニングによる訓練は、令和8年8月3日以降に提出した計画届の分については1年度1回までとなります。年度は支給申請日を基準に、4月1日から翌年3月31日までで数えます。
申請は自社でできますか?社労士に頼むべきですか?
自社でも申請できます。ただし計画届・支給申請ともに書類が多く、記載を誤ると不支給になります。社会保険労務士に依頼する場合の費用は事務所により異なりますので、複数社にご確認ください。当社では、研修の提供とあわせて申請の進め方をご案内しています。
14 📌 公式情報源
この記事の数値は、すべて以下の一次情報から引用しています(2026年8月時点)。制度は年度で変わるため、申請前には必ず最新版をご確認ください。
| 資料 | 版 | URL |
|---|---|---|
| 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版) | 令和8年8月3日版 | 厚生労働省 |
| 支給要領 | 令和8年8月3日版 | 厚生労働省 |
| 人材開発支援助成金(制度トップ) | — | 厚生労働省 |
「うちは対象か」「いくら戻るか」を、30分で確定させます
制度を読み解く時間を使うより、従業員数と研修内容を伺って、その場で計算するほうが早く進みます。当社はClaude・Claude Code実装研修を、この助成金の対象となる形(20時間・OFF-JT)で提供しています。貴社の実業務・実データで本番稼働する自動化を2本作るところまでが研修の内容です。
支給を保証するものではありません。支給の可否と金額は労働局の審査により決定されます。本記事は2026年8月時点の公開情報に基づいており、制度の内容は変更される場合があります。申請にあたっては、必ず管轄の都道府県労働局にご確認ください。


