介護施設のDXの進め方|現場が回る6フェーズと90日プラン【2026】

「介護施設もDXを、とは言われるけれど、具体的に何から・どんな順番で進めればいいのか」「一度ツールを入れて失敗した」「現場がついてきてくれるか不安」——介護施設のDXは、進め方そのものでつまずくケースが最も多いのが実情です。

本記事は、AI×ノーコードで115件以上を支援してきた立場から、介護施設のDXの進め方を「現場が回る手順」に落として解説します。6つのフェーズ・体制のつくり方・業務棚卸しのやり方・優先順位の決め方・現場の抵抗への対処・90日のスケジュール例・チェックリストまで。読み終えたら、明日から動ける状態になる構成です(2026年時点)。

 

結論

介護施設のDXは、「①準備(目的と体制)→②業務の棚卸し→③優先順位づけ→④1業務だけ小さく導入→⑤定着→⑥横展開」の6フェーズで進めます。成否を分けるのは、ツール選びよりもこの順番を守ることです。

とくに重要なのが、④で「1業務だけ」に絞ること、そして⑤の定着を確認してから次に進むこと。多くの失敗は「いきなり全部」「入れて放置」から生まれます。現場を巻き込む体制のつくり方、抵抗が出たときの対処、90日で最初の成果を出すスケジュール例まで、この記事で具体的にお伝えします。

6フェーズで迷わない
1業務から始める
90日で最初の成果
定着→横展開
西澤 志門

この記事を書いた人

西澤 志門(ソウゾウ合同会社 代表)

一般社団法人Nocoders Japan協会 理事。AI×ノーコードで115件以上のプロジェクトを支援。介護・福祉現場のDXに伴走し、北海道の介護施設でAIシフト自動生成システムを構築中。

支援実績115件+
利用率92%
棚卸しから伴走
介護施設のDXを、進め方の設計から定着まで一緒に進めます。
クリックできる目次

この記事でわかること(早見表)

知りたいこと 結論(要約)
なぜDXは頓挫するか 順番の間違い。「いきなり全部」「入れて放置」が2大要因
6フェーズの全体像 準備→棚卸し→優先順位→小さく導入→定着→横展開
体制のつくり方 推進役+現場キーパーソン。専任ITは不要
棚卸しのやり方 業務×時間×痛みを紙1枚で見える化
優先順位の決め方 「効果×やりやすさ」の2軸で1業務に絞る
定着させるコツ 現場の声で直す・入力率を見る・抵抗への対処
90日スケジュール例 準備2週→構築1か月→定着1.5か月

※介護DXの全体像(意味・ツール・補助金)は介護DXとは、AI活用の全体像は介護のAI活用完全ガイドをご覧ください。本記事は「進め方」の実践編です。

01 なぜ介護施設のDXは頓挫するのか

進め方の話に入る前に、失敗パターンを知っておきましょう。介護施設のDXがうまくいかない原因は、驚くほど共通しています。

いきなり全部を変えようとする

記録も請求もシフトも一気に——現場が追いつかず、教育コストが爆発して頓挫する。

ツール選びから始める

「何を入れるか」が先行し、「何の時間を減らすか」が置き去りに。入れて満足で終わる。

現場を置いてけぼり

本部や管理者だけで決めて配布。入力する人が使い方も意義も知らないまま形骸化。

導入して放置

最初の1〜2週間のつまずきを拾わず、気づけば紙とエクセルに逆戻り

共通するのは、ツールの問題ではなく「順番と体制」の問題だということ。裏を返せば、順番さえ守れば、特別なIT人材がいない施設でもDXは進められます。その順番が、次の6フェーズです。

02 介護施設DXの進め方|6フェーズの全体像

フェーズ やること 期間の目安
① 準備 目的を1行で決める・推進体制をつくる 1〜2週間
② 業務の棚卸し 時間を奪っている業務を紙1枚に見える化 1週間
③ 優先順位づけ 「効果×やりやすさ」で最初の1業務を選ぶ 数日
④ 小さく導入 1業務だけツール/仕組みを入れて試す 2週間〜1か月
⑤ 定着 現場の声で直し、使われる状態にする 1〜1.5か月
⑥ 横展開 うまくいった型を隣の業務・他施設へ 以降くり返し

ポイントは、④〜⑤を1業務で完結させてから⑥へ進むこと。1周目で「うちの施設でのDXの型」ができるので、2周目からは格段に速くなります。

西澤 志門代表 西澤

💡 実際に何施設も伴走してきて感じるのは、うまくいくかどうかは“ツール選び”より“始め方”で決まるということ。1業務に絞れた施設は、ほぼ確実に前へ進みます。

以下、各フェーズを具体的に見ていきます。

03 フェーズ①準備|目的と体制をつくる

目的は「1行」で決める

最初に決めるのはツールではなく目的です。しかも抽象的な「業務効率化」ではなく、「何の時間を、誰のために減らすか」を1行で。

目的の書き方(例)

◎「記録の清書をなくして、職員1人あたり1日30分をケアに戻す」
◎「シフト作成の丸2日を数時間にして、管理者を現場フォローに戻す」
×「DXを推進する」「業務を効率化する」——これでは進捗も成否も測れません。

体制は「推進役+現場キーパーソン」の最小構成で

推進役(1名)

経営層または管理者。決める権限を持つ人。ITスキルは不要、必要なのは「やり切る意思」。

現場キーパーソン(1〜2名)

実際に入力・利用する現場の職員。「現場の声の窓口」兼「最初の応援団」。若手のスマホ得意な職員が適任なことが多い。

外部の伴走者(任意)

設計・構築の経験者。最初の1周だけプロと組み、2周目から自走する形が費用対効果が高い。

専任IT担当は不要

ノーコードとAIの進化で、専任がいなくても回せる時代。兼任で十分。

大切なのは、現場キーパーソンを最初から巻き込むこと。「決まったものが降ってきた」ではなく「一緒に作った」と感じられるかで、後の定着がまったく変わります。

04 フェーズ②業務の棚卸し|紙1枚で見える化する

次に、時間を奪っている業務を見える化します。難しいフォーマットは不要。紙1枚(またはホワイトボード)に、次の3列を書き出すだけです。

業務(例) かかっている時間 痛み(何がつらいか)
介護記録の清書 1人30分/日 手書き→PCの二重入力。残業の原因
シフト作成 管理者が丸2日/月 条件が複雑。不公平の不満も出る
送迎表づくり 30分/日 急な変更のたびに組み直し
請求(国保連) 月初に集中 転記・突合で深夜残業
申し送り 15分×3回/日 口頭と付箋で抜け漏れが不安

コツは2つ。①現場キーパーソンと一緒に書く(管理者の想像と現場の実態はズレます)、②時間は概算でよいので必ず数字にする(後で効果を測る物差しになります)。この表が、DX全体の設計図になります。

05 フェーズ③優先順位|「効果×やりやすさ」で1業務に絞る

棚卸しした業務を、2つの軸で評価して最初の1業務を選びます。

軸1:効果の大きさ

削減できる時間×関わる人数。毎日発生・複数人が関わる・転記がある業務ほど効果大。

軸2:やりやすさ

例外処理が少なく定型的か。失敗しても致命傷にならないか(請求のような失敗できない業務は2周目以降に)。

最初の1業務の”鉄板”

多くの施設で「効果×やりやすさ」が高いのは、①介護記録(清書・申し送り)②シフト作成 ③送迎表・日報などの定型事務です。逆に、最初に選んではいけないのは請求などの失敗できない業務と、例外だらけの属人業務。1周目は「確実に勝てる戦」を選び、成功体験をつくることが何より大切です。

領域別の具体策は、記録シフト事務の各記事で詳しく解説しています。

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06 フェーズ④小さく導入|ツール選定と最初の構築

1業務が決まったら、手段を選びます。大きくは既製の介護ソフトか、AI(Claude・Claude Code)を活用した自社専用の仕組みかの2択です(詳しくは介護ICTツール比較)。

状況 向いている手段
標準的な記録・請求で、既製の型に合わせられる 既製の介護ソフト(定番5種の比較はこちら
独自ルール・独自帳票が多い/既製で失敗した AIを活用した自社専用ツール(シフトの構築例
導入費を抑えたい どちらの場合も補助金の活用を検討

導入時の鉄則は、「完成品を配らない」こと。7割の出来で現場キーパーソンに触ってもらい、声を反映してから全体に広げます。この「一緒に仕上げる」プロセス自体が、定着の下ごしらえになります。

07 フェーズ⑤定着|現場が使い続ける状態をつくる

DXの成否はここで決まります。定着のためにやることは3つです。

① 最初の2週間は毎日拾う

「入力しづらい」「ここが分からない」をその日のうちに直す。初期のつまずき放置が逆戻りの最大要因。

② 入力率を見る

感想ではなく数字で定着を測る。入力率が落ちたら、人ではなく設計を疑う

③ 効果を現場に返す

「記録時間が1人30分減った」を数字で共有。自分たちの仕事が楽になった実感が、次の協力を生む。

現場から抵抗が出たときの対処

「今のやり方で困っていない」「機械は苦手」——抵抗は必ず出ます。抵抗は敵ではなく、設計改善のヒントとして扱いましょう。

よくある声 対処
「紙のほうが早い」 入力項目を減らす。紙より速くなるまで削るのが設計側の仕事
「機械が苦手」 ボタン・選択式中心にする。キーパーソンが隣で3回一緒にやる
「意味があるのか」 目的の1行と、削減時間の数字を共有する
「忙しくて覚えられない」 教える内容を「最初の1機能」だけに絞る。全機能は教えない

それでも動かない場合、原因はたいていツールが業務に合っていないことです。人を責める前に、業務との適合を見直してください。

西澤 志門代表 西澤

💡 反発が出たときこそ、設計の見直しどきです。入力を“紙より速い”ところまで削れると、現場の空気が目に見えて変わります。

08 90日スケジュール例|最初の成果までの道のり

期間 フェーズ やること
1〜2週目 ①準備 目的1行・推進役と現場キーパーソン決定
3週目 ②棚卸し 業務×時間×痛みを紙1枚に。現場と一緒に
4週目 ③優先順位 効果×やりやすさで最初の1業務を決定・手段選定
5〜8週目 ④小さく導入 構築・キーパーソンで試用・声を反映して調整
9〜12週目 ⑤定着 全体展開・毎日フォロー・入力率と削減時間を計測
13週目〜 ⑥横展開 効果を共有し、2つ目の業務へ(2周目は速い)

90日で「最初の1業務が定着し、削減時間が数字で見える」状態を目指します。ここまで来れば、2周目以降は現場の信頼貯金があるので、格段にスムーズに進みます。補助金を使う場合は、公募時期から逆算してこのスケジュールに申請〜交付決定の待ち時間を織り込んでください(補助金の申請の流れ)。

規模別|進め方の違い

基本の6フェーズは同じですが、施設の規模によって力点が変わります。

規模 力点 注意点
単独・小規模(〜30名規模) 推進役=経営者が兼任。意思決定が速い強みを活かし、90日より短い周回も可能 担当者が兼任で潰れないよう、範囲を欲張らない
中規模(複数ユニット) ユニットごとの温度差が出やすい。まず1ユニットで成功例をつくり、横のユニットへ展開 全ユニット同時スタートは避ける
複数施設運営 モデル施設を1つ選んで型をつくり、他施設へ複製。施設ごとの独自ルールは型の「差分」として扱う 本部主導の一斉導入は現場が置き去りになりがち

共通するのは、どの規模でも「小さな成功→複製」の順で進めること。北海道で私たちが支援している3〜5施設運営の法人でも、まずシフトという1業務・1つの型から着手しています(構築事例はこちら)。

効果測定|「削減時間」と「入力率」の2つだけ見る

DXの効果測定は複雑にしないのがコツです。次の2つの数字だけ、月1回見てください。

削減時間(成果)

棚卸しで書いた「導入前の時間」との差。目的の1行が達成できているかを測る。例:記録30分/日→10分/日なら、1人あたり月約7時間の創出。

入力率(健康状態)

使うべき人のうち、実際に入力している割合。90%を切ったら設計を疑う。定着の先行指標として機能する。

この2つを職員にも見える場所(朝礼・掲示・チャット)で共有すると、「自分たちの取り組みが成果を出している」実感が生まれ、次のフェーズへの推進力になります。

西澤 志門西澤 志門
ソウゾウ代表

\ 西澤のひとこと /

DX導入がうまくいくかどうかは、ツールそのものより「どの順番で進めるか」でほぼ決まります。実際に何施設も伴走してきて見えた、失敗しない手順をお伝えします。

◆ この順でやると失敗しない(4ステップ)

  1. 棚卸し:まず「今、何にいちばん時間を取られているか」を書き出す。ツール選びはここから
  2. 一つに絞る:全部を一度に変えず、最も負担の重い業務ひとつに対象を絞る
  3. 小さく試す:1か月だけ試作して、現場の感触を確かめてから本格運用へ
  4. 広げる:一つ定着してから次の業務へ。成功体験を積み上げながら横展開する

順番を飛ばして「いきなり全部」「いきなり本格導入」に走ると、たいてい現場が追いつきません。

◆ つまずいた施設の共通点

  • 現場を巻き込まず、管理側だけで決めてしまった:入力する職員の負担が見えず、使われなくなる
  • 多機能なものを選びすぎた:機能に振り回され、「前より大変」になる
  • 運用ルールを決めずに入れた:結局また紙やExcelに戻ってしまう

◆ 小さく始めて定着させるコツ

いちばん効くのは、「一番困っている業務」から始めて、早い段階で”楽になった”を体感してもらうことです。最初の成功体験があると、現場が自分から「次はこれも」と前向きになります。ここが定着と頓挫の分かれ道です。

◆ まずは”楽になる体験”から

その第一歩として分かりやすいのが、負担の大きいシフト作成の自動化です。ソウゾウが構築したシステムは、資料をダウンロードいただいた方に、実際に触れるデモをご案内しています。「これくらい変わるのか」をまず体感してみてください。

👉 資料を受け取ってデモを試す(無料)

09 進め方チェックリスト

✅ 着手前にこの10点を確認

□ 目的を「何の時間を誰のために減らすか」の1行にしたか
推進役(決める人)を決めたか
現場キーパーソンを最初から巻き込んだか
□ 業務×時間×痛みを紙1枚に棚卸ししたか
□ 「効果×やりやすさ」で1業務だけに絞ったか
□ 失敗できない業務(請求等)を1周目に選んでいない
□ 手段(既製ソフト/自社専用)を業務から逆算して選んだか
補助金の公募時期を確認したか
□ 最初の2週間の毎日フォロー体制はあるか
□ 効果を測る数字(削減時間・入力率)を決めたか

10個すべて「はい」なら、あなたの施設のDXが頓挫する可能性はかなり低いはずです。逆に「いいえ」が3つ以上あれば、着手前にそこを埋めるのが先です。

10 よくある質問(介護施設 DX 進め方)

介護施設のDXは何から始めればいいですか?

ツール選びではなく「目的の1行化」と「業務の棚卸し」からです。時間を奪っている業務を見える化し、効果×やりやすさで最初の1業務を選んでから、手段を決めます。

ITに詳しい職員がいなくても進められますか?

進められます。必要なのは専任ITではなく、決める権限を持つ推進役と、現場のキーパーソンです。ノーコードとAIの進化で、構築のハードルは大きく下がっています。

最初の1業務は何がおすすめですか?

多くの施設では、介護記録(清書・申し送り)、シフト作成、送迎表などの定型事務が「効果×やりやすさ」で優位です。請求など失敗できない業務は2周目以降に。

現場の反発が心配です。

抵抗は必ず出ますが、設計改善のヒントです。入力項目を紙より速くなるまで削る、教える範囲を絞る、効果を数字で返す——で多くは解消します。最初からキーパーソンを巻き込むのが最大の予防策です。

どれくらいの期間で効果が出ますか?

1業務に絞れば、90日で「定着し、削減時間が数字で見える」状態を目指せます。2周目からはさらに速く進みます。

費用を抑える方法はありますか?

IT導入補助金や介護ICT補助金を活用できる場合があります。公募時期と「交付決定前の発注NG」に注意し、スケジュールに織り込みましょう。詳しくは補助金まとめへ。

一度DXに失敗しています。やり直せますか?

やり直せます。失敗の多くは順番の問題です。今回は1業務に絞り、現場と一緒に、定着まで見届ける——この3点を変えるだけで結果は変わります。

進め方の相談はできますか?

はい。棚卸し・優先順位づけの設計から、構築・定着まで伴走します。無料相談からどうぞ。

「進め方の設計」から、プロと一緒に

支援実績115件+・利用率92%。目的の言語化・棚卸し・優先順位づけから、構築・現場定着・横展開まで——ソウゾウが提案で終わらせず伴走します。一度失敗した施設のやり直しも歓迎です。

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