介護のAI活用|場面別の使いどころと向き不向きの判断材料【2026】

「介護でAIを活用できると聞くけれど、実際どの場面で・何に使えるのかがピンとこない」「うちの業務のどこにAIを当てはめればいいの?」——AIの話は抽象的になりがちで、現場の一日に落とし込んだ活用イメージはなかなか見つかりません。

本記事は、AI×ノーコードで115件以上を支援してきた立場から、介護現場のAI活用を「1日の場面別」のカタログ形式で具体化します。夜勤・日中ケア・事務・家族対応それぞれでAIに任せられること/人がやるべきこと、活用の向き・不向きを見極める判断フレーム、活用が進む施設の共通点まで。読み終えたら「うちならここから」が決まる構成です(2026年時点)。

結論

介護のAI活用は、「現場の1日のどの場面か」で考えると一気に具体化します。使いどころは大きく——①記録・申し送り ②シフト・人員配置 ③事務(送迎・請求・帳票)④夜間の見守り ⑤家族・外部への文章対応の5場面です。

見極めの原則はシンプルで、「判断は人、作業はAI」。誰がやっても同じで時間だけかかる作業はAIに任せ、利用者への判断・共感・ケアは人が担う。この線引きさえ守れば、AI活用は「怖いもの」ではなく人の時間を取り戻す道具になります。まずは1場面、いちばん時間を奪われているところから始めましょう。

5場面で考える
判断は人作業はAI
1場面から開始
時間創出がゴール
西澤 志門

この記事を書いた人

西澤 志門(ソウゾウ合同会社 代表)

一般社団法人Nocoders Japan協会 理事。AI×ノーコードで115件以上のプロジェクトを支援。介護・福祉現場のDXに伴走し、北海道の介護施設でAIシフト自動生成システムを構築中。

支援実績115件+
利用率92%
活用設計から伴走
「どの場面から使うか」の設計から、構築・定着まで支援します。
クリックできる目次

この記事でわかること(早見表)

知りたいこと 結論(要約)
活用の大原則 判断は人・作業はAI。この線引きがすべての土台
場面別の活用カタログ 記録/シフト/事務/夜間見守り/家族対応の5場面
向き・不向きの判断 「定型か・例外は多いか・失敗できるか」の3問で判定
活用が進む施設の共通点 小さく始める・現場を巻き込む・数字で確認する
最初の一歩 いちばん時間を奪う1場面から。90日で成果を出す

※介護AIの全体像(導入手段・費用・補助金・注意点)は介護のAI活用完全ガイドを、DXの進め方は介護施設のDXの進め方をご覧ください。本記事は「活用場面」の実践カタログです。

01 活用の大原則|「判断は人、作業はAI」

個別の場面に入る前に、すべての土台になる原則をひとつだけ。介護のAI活用で迷ったら、「これは判断か、作業か」と問うてください。

人が担う「判断」 AIに任せる「作業」
利用者の状態の見立て・ケアの決定 見立てた内容を記録文に整える
シフトの最終決定・個別事情への配慮 条件を満たすシフト案を複数作る
家族への説明の中身・伝え方の判断 説明文・報告文の下書きを作る
ヒヤリハットの原因分析と対策決定 報告書の形式に整える・集計する

AIが代替するのは「誰がやっても同じで、時間だけかかる作業」です。介護の専門性——観察・判断・共感・関係づくり——はAIには担えませんし、担わせるべきでもありません。この線引きを守る限り、AI活用はケアの質を下げるどころか、ケアに使える時間を増やす方向にしか働きません。

西澤 志門代表 西澤

💡 私はAIを「AI社員」と呼んでいます。人がやらなくていい業務を担ってくれる、もう一人の仲間。業務フローを「AI社員がいる前提」で組み直すと、活用の発想が一気に広がります。

02 場面別|介護AIの活用カタログ

ここからが本題です。現場の1日を思い浮かべながら、5つの場面ごとに「AIに任せられること」を見ていきましょう。

場面①:記録・申し送り(日中〜夕方)

AIに任せる 効果
話す・選ぶだけの入力を記録文に自動整形 清書・二重入力が消える(1人30分/日規模)
1日の記録から申し送り事項を自動要約 引き継ぎ漏れの防止・申し送り時間の短縮
表記のゆれを統一 誰が書いても一定の品質に

もっとも効果が出やすく、多くの施設の「最初の一歩」になる場面です。→詳しくは介護記録をAIで効率化

場面②:シフト・人員配置(月次)

AIに任せる 効果
希望と配置ルールからシフト案を複数生成 丸2日級の作成作業が「選んで微調整」に
配置基準・夜勤上限・連勤の自動チェック ルール違反の見落とし防止
夜勤回数などの公平性を見える化 不公平感からくる不満の軽減

「AさんとBさんは組めない」のような自社固有の条件も、AI(Claude・Claude Code)を活用した自社専用システムなら組み込めます。→詳しくは介護のシフト作成をAIで自動化(北海道の構築事例つき)

場面③:事務——送迎・請求・帳票(日次〜月初)

AIに任せる 効果
送迎表の半自動作成・変更時の組み直し 毎朝の手作業と電話連絡が激減
実績の自動集計・請求前の点検補助 月初の残業を平準化(最終確認は人)
帳票・加算書類の下書き生成 作成と点検の時間短縮

管理者・事務員の「月初パンク」を解消する場面です。→詳しくは介護の事務作業をAIで減らす

場面④:夜間の見守り(夜勤帯)

AIに任せる 効果
センサーによる睡眠・離床の検知と通知 定時巡回の負担軽減・転倒の早期発見
検知データの記録への自動連携 夜勤明けの記録作業を短縮

少人数で回す夜勤帯こそ、テクノロジーの出番です。見守り機器の導入は生産性向上推進体制加算の要件にも関わるため、加算とセットで設計すると投資回収が速くなります。

場面⑤:家族・外部への文章対応(随時)

AIに任せる 効果
記録をもとに家族向け報告文の下書き 「伝わる文章」を書く負担を軽減
よくある問い合わせへの一次回答案 対応の抜け・待ち時間を減らす
お知らせ・文書の作成補助 事務室の細かな文章作業を短縮

見落とされがちですが、「文章を書く」仕事は生成AIがもっとも得意とする領域。ChatGPTやClaudeをそのまま使う場合は、利用者の個人情報を入力しない運用ルールを先に決めてください(全体ガイドの注意点参照)。

西澤 志門代表 西澤

💡 5場面を全部やる必要はありません。8時間のうち3時間が事務で消えているなら、まずそこ。AIに任せた3時間をケアに回せたら、施設のサービスの質は目に見えて変わります。

1日のタイムラインで見る活用イメージ(入所施設の例)

時間帯 現場の動き AIの出番
7:00〜9:00 起床介助・朝食・申し送り 夜間の見守りデータが記録に反映済み。申し送りはAI要約を確認するだけ
9:00〜12:00 ケア・入浴介助 ケアの合間にスマホで話す・選ぶだけ入力→記録文はAIが整形
13:00〜15:00 レク・記録 まとめて清書する時間が不要に。浮いた時間をレクの充実へ
16:00〜17:00 申し送り・家族連絡 1日の記録から申し送り・家族向け報告の下書きを自動生成
夜勤帯 巡回・コール対応 センサーが睡眠・離床を検知。定時巡回の負担を軽減
月次 シフト・請求 シフト案はAIが複数生成、実績集計は自動。人は確認と決定

ポイントは、AIの出番が「特別なAIタイム」ではなく、いつもの業務の中に溶け込んでいること。現場が新しい仕事を覚えるのではなく、いつもの仕事から面倒な部分が消えていく——これが定着するAI活用の姿です。

いますぐ試せる|生成AIへの指示文(プロンプト)例

自社専用システムを作る前に、ChatGPTやClaudeで今日から試せる使い方もあります(🔴利用者名などの個人情報は入力しない・情報の取り扱いルールを決めてから)。

例1:記録メモを記録文に整える

「以下の箇条書きメモを、介護記録の文体(です・ます調、客観的表現)で3行以内にまとめてください。推測は入れず、書かれた事実のみ使ってください。+(メモを貼る※個人名は伏せる)」

例2:家族向け報告文の下書き

「以下の様子を、ご家族向けの温かみのある報告文(100字程度)にしてください。専門用語は使わず、安心につながる表現で。+(様子のメモ)」

例3:委員会・会議の議事録要約

「以下の会議メモを『決定事項』『継続検討』『担当と期限』の3項目で整理してください。+(メモ)」

この「下書きはAI・確認は人」の型に現場が慣れてくると、自社専用システム化したときの定着も一気に速くなります。

03 AI活用の向き・不向き|3つの質問で判断する

「この業務、AIでいけるかな?」と迷ったら、次の3問で判定してください。

Q1. 定型的か?

手順やパターンが決まっている業務ほど向く。毎回ゼロから考える業務は人の領域。

Q2. 例外は多くないか?

例外だらけの業務は、定型部分だけ切り出してAI化する。全部を任せようとしない。

Q3. 失敗しても直せるか?

下書き・たたき台として使い、人が確認して直せる業務から。請求など失敗できない業務は点検補助にとどめる。

判定 進め方
◎ すぐ活用 記録の整形・申し送り要約・帳票下書き・シフト案生成 1業務目の候補に
○ 部分的に活用 請求の点検補助・ケアプランの文案(判断は専門職) 下書き+人の確認で運用
× 任せない ケアの判断・利用者/家族との関係づくり・急変対応 人の専門性に集中する領域

「うちの場合、どの場面から?」を一緒に設計します

業務を伺い、効果の大きい活用場面と手段(既製ソフト/自社専用)を見立てます。まずは無料相談から。

04 活用が進む施設・止まる施設の違い

同じツールを入れても、活用が進む施設と止まる施設があります。伴走してきた実感として、違いは次の3点に集約されます。

観点 進む施設 止まる施設
始め方 1場面に絞って小さく始める 一気に複数場面へ導入する
現場の関与 入力する職員を最初から巻き込む 決まったものを配布して終わり
振り返り 削減時間・入力率を数字で確認し共有 効果を測らず「入れたまま」

気づいた方もいると思いますが、これはDXの進め方で解説した6フェーズと同じ構造です。AI活用は「導入イベント」ではなく「運用の習慣」。習慣にできた施設だけが、2場面目・3場面目と活用を広げていけます。

自社の「活用レベル」を診断してみる

現在地が分かると、次の一歩が決まります。自社はどのレベルでしょうか。

レベル 状態 次の一歩
レベル0 紙とエクセル中心。AIは未使用 生成AIで「下書きはAI」を体験(上のプロンプト例から)
レベル1 個人が生成AIをたまに使う 個人情報の取り扱いルールを決め、チームの型にする
レベル2 1場面で仕組みとして運用中(記録 or シフト等) 削減時間を数字で確認→加算も視野に2場面目へ
レベル3 複数場面がデータでつながっている 記録→実績→請求の一気通貫へ。施設の「型」を横展開

多くの施設はレベル0〜1です。焦る必要はありません。レベルを一段ずつ上げることが、結果的にいちばん速い道です。逆に、レベル0からいきなりレベル3を狙う「一気呵成の導入」が、頓挫の典型パターンです。

西澤 志門代表 西澤

💡 AIの進化スピードは今年さらに上がります。業務フローをAI中心に作り変える施設と、様子見の施設とでは、1年後に大きな差が開く——伴走している現場を見て、本気でそう感じています。

05 最初の一歩|1場面を90日で形にする

  1. 時間を奪われている場面を特定5場面のうち、いちばん「痛い」ところを1つ選ぶ(迷ったら記録かシフト)。
  2. 手段を選ぶ標準業務なら既製ソフト、自社固有ルールが強ければAI(Claude・Claude Code)で自社専用(ツール比較)。
  3. 費用は補助金と加算で設計導入は補助金、運用後は生産性向上推進体制加算で回収。
  4. 90日で定着まで進め方の6フェーズに沿って、小さく導入→毎日フォロー→数字で確認。

ここまでの流れを個別記事で深掘りしています。全体像から確認したい方は介護のAI活用完全ガイドへどうぞ。

西澤のひとこと

西澤 志門西澤 志門
ソウゾウ代表

AIをどこに使うか迷ったら、私は「定型度の高い業務から」とお伝えしています。記録・報告・下書きのように型が決まっている作業はAIが最も効く領域。逆に、利用者の状態を見立てて方針を決める判断業務は人が担うべきで、ここを無理にAIに任せると失敗します。

根っこにあるのは、「人間にしかできない仕事」と「人間がやらなくてもいい仕事」を切り分けるという考え方です。書類の下書きはAI、最終判断はケアマネや介護職——この役割分担が、現場に受け入れられる活用の鍵でした。削減できた時間を利用者と向き合うケアに回せれば、活用の効果は数字にも表れます。

導入判断で見るべきは、「削減できる時間 × 関わる人数」個人情報の扱いです。機微な情報を扱う以上、入力した情報が生成AIに学習されない設定は必須。人手不足が進む中で、AIで時間を作りケアに回せる事業所とそうでない事業所では、1年後に大きな差が出ると考えています。

06 よくある質問(介護 AI 活用)

介護のAI活用はどの場面から始めるべきですか?

いちばん時間を奪われている場面からです。多くの施設では記録・申し送り、またはシフト作成が「効果×やりやすさ」で最有力です。迷ったら業務の棚卸しから始めましょう。

AIに任せてよい業務・ダメな業務の見分け方は?

「定型的か」「例外は多くないか」「失敗しても人が直せるか」の3問で判定します。ケアの判断・利用者との関係づくり・急変対応は人の領域で、AIには任せません。

ChatGPTやClaudeをそのまま現場で使ってもいいですか?

文章の下書きには有効ですが、利用者の個人情報を外部AIに入力する扱いには注意が必要です。入力してよい範囲・権限・管理ルールを決めてから使ってください。

AI活用でケアの質は下がりませんか?

「判断は人、作業はAI」の線引きを守る限り、下がりません。むしろ事務作業が減った分をケアに回せるため、質を上げる方向に働きます。

小さな施設でも活用できますか?

できます。1場面・1業務から小さく始められるのがAI×ノーコードの利点で、意思決定の速い小規模施設ほど早く成果が出ることも多いです。

費用はどれくらいかかりますか?

手段によります。生成AIは無料〜数千円/月、既製ソフトは月額、自社専用は構築費が中心です。導入は補助金、運用後は生産性向上推進体制加算で回収する設計が現実的です。

職員がAIに抵抗感を持っています。

「仕事を奪う」のではなく「事務を肩代わりして、ケアの時間を返す」道具だと、目的と数字で示すのが有効です。入力する職員を最初から巻き込み、紙より速い設計にすることで多くは解消します。

生成AIと自社専用システム、どちらから始めるべき?

まず生成AI(ChatGPT/Claude)で「下書きはAI・確認は人」の型を体験し、効果を感じた業務から仕組み化(既製ソフトや自社専用システム)へ進むのが低リスクです。個人情報の扱いルールだけ先に決めてください。

夜勤の見守りにAIを使うのは安全ですか?

見守り機器は「人の巡回を置き換える」のではなく「異変に早く気づくための補助」です。通知への対応手順とセットで運用すれば、安全性はむしろ高まります。加算要件との関係は生産性向上推進体制加算の記事をご覧ください。

活用の相談はできますか?

はい。活用場面の設計から、構築・定着まで伴走します。無料相談からどうぞ。

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